この記事でわかること
イギリスは1824年に世界初の動物愛護団体RSPCAを設立し、ビクトリア時代には「ペットは家族」という価値観が社会に浸透しました。日本より約150年先を行く動物愛護の歴史と、現代まで続くペット先進国としての背景を解説します。
「なぜイギリスはペット先進国と呼ばれるのか?」
その答えは、200年前にさかのぼります。
イギリスは世界で初めて動物愛護団体を設立した国であり、ペットを「家族の一員」として大切にする文化が、ビクトリア時代から脈々と受け継がれてきました。
1822年「マーティン法」から始まった動物愛護
イギリスの動物愛護の歴史は、1822年に成立した「マーティン法(Cruel Treatment of Cattle Act)」から始まります。
これは世界で初めて動物への虐待を犯罪として定めた法律でした。
1822年
世界初の動物保護法が誕生
リチャード・マーティン議員の提案で成立
この法律を推進したのは、アイルランド出身の国会議員リチャード・マーティン。
国王ジョージ4世から「人道のディック(Humanity Dick)」と呼ばれた人物です。
当時のイギリスでは、牛や熊を鎖でつないで犬に襲わせる「ベイティング」が娯楽として楽しまれていました。
動物は「物」として扱われ、虐待は日常的に行われていたのです。
マーティン法は牛、馬、羊などの家畜を対象としており、犬や猫は含まれていませんでした。
しかしこの法律は、動物にも「苦痛を感じる権利がある」という考え方を社会に広めるきっかけとなったのです。
コーヒーショップで生まれたRSPCA
1824年6月16日、ロンドンのオールド・スローターズ・コーヒーハウスに22人の男たちが集まりました。
彼らの目的は、動物を守るための組織を作ること。
こうして誕生したのが「SPCA(Society for the Prevention of Cruelty to Animals)」、現在のRSPCAの前身です。
設立メンバーの顔ぶれ
マーティン法を推進したリチャード・マーティン、奴隷制度廃止運動で知られるウィリアム・ウィルバーフォース、そして初代事務局長となったアーサー・ブルーム牧師など、当時の社会改革者たちが名を連ねていました。
設立から16年後の1840年、ヴィクトリア女王がこの団体に王室の後援を与え、「Royal」の称号が加わりました。
RSPCAの誕生です。
ヴィクトリア女王自身も愛犬家でした。 スコットランドの別荘バルモラル城では、愛犬と一緒に写真に収まる姿が数多く残されています。
女王の後援を得たことで、動物愛護は「上流階級の気まぐれ」から「国民的な価値観」へと変わっていきました。
2024年現在、RSPCAは年間90万件以上の通報を受け、約6万1000件の虐待事案を調査しています。
200年前にコーヒーショップで始まった小さな集まりは、今もイギリス最大の動物愛護団体として活動を続けているのです。
ビクトリア時代に広まった「ペットは家族」の価値観
イギリスで「ペットは家族の一員」という考え方が広まったのは、ビクトリア時代(1837〜1901年)のことでした。
それ以前、ペットを飼うことは貴族や富裕層の贅沢と見なされていました。
猫は「ネズミ捕り」として飼われ、役に立たなければ処分されることも珍しくなかったのです。
動物愛護法の歴史
1973年に「動物の保護及び管理に関する法律」を制定。イギリスより約150年遅れてのスタートでした。
1822年に世界初の動物保護法を制定。ビクトリア時代には「ペットは家族」の価値観が社会に浸透しました。
この変化をもたらしたのは、産業革命による社会構造の変化でした。
騒々しく汚れた工業都市が広がる中、イギリス人は「家庭」を神聖な場所として理想化するようになりました。
そしてペットは、その理想的な家庭を象徴する存在となったのです。
当時の育児書では、子どもにウサギやモルモットなどの小動物を飼わせることが推奨されました。
ペットの世話を通じて、責任感や思いやりを学ばせようという教育的な意図があったのです。
また、中産階級の家庭では「血統書付きの犬」を飼うことがステータスシンボルとなりました。
1873年には世界初の犬種登録機関「ケネルクラブ」が設立され、犬の品種管理が体系化されていきます。
ビクトリア時代に確立された「ペットは家族」という価値観は、現代のイギリス社会にも深く根付いています。
電車やバスに犬を無料で乗せられること、パブやカフェに犬を連れて入れることなど、イギリスの「ペットフレンドリー」な社会は、200年にわたる動物愛護の歴史の上に成り立っているのです。
まとめ
イギリスは1822年に世界初の動物保護法を制定し、1824年にRSPCAを設立した動物愛護の先駆者です。ビクトリア時代には「ペットは家族」という価値観が社会に浸透し、この200年の歴史が現代のペット先進国としての基盤を築きました。