コラム

リードを外して散歩が普通?イギリスのオフリード文化と暗黙のルール

「コントロール下」という法的条件と飼い主の責任

約7分
リードを外して散歩が普通?イギリスのオフリード文化と暗黙のルール

この記事でわかること

イギリスでは犬のリード着用義務がなく、64%の飼い主がオフリードで散歩しています。ただし「常にコントロール下に置く」という厳格な条件があり、黄色いリボンを付けた犬には近づかないなど独自のマナーが存在します。

日本では当たり前の「犬はリードにつなぐ」というルール。 しかしイギリスの公園を歩くと、リードなしで自由に駆け回る犬たちの姿に驚く方も多いでしょう。

イギリスには犬のリード着用を義務付ける法律がありません。 その代わりに「常にコントロール下に置く」という条件が求められます。 この違いが、日本とは全く異なるオフリード文化を生み出しました。

リード義務がない?イギリスの法的ルール

意外に思われるかもしれませんが、イギリスには犬のリード着用を義務付ける全国的な法律がありません。 飼い主に求められるのは「犬を常にコントロール下に置くこと」です。

犬のリードに関する法的義務
イギリス

全国的なリード義務なし。ただし「コントロール下」が条件。呼び戻しに応じない犬は「コントロール下にない」と判断される。

日本では東京都動物愛護条例をはじめ、ほぼすべての自治体で「犬を係留すること」が義務付けられています。 これは物理的にリードで繋ぐことを前提とした規定です。 一方イギリスでは、リードの有無ではなく「飼い主が犬をコントロールできているか」が問われます。

ロイヤルケネルクラブは「呼び戻しができることは法的義務でもある」と明言しています。 オフリードが許可されているのは、飼い主の責任が厳しく問われる前提があるからです。

もし犬が他人や家畜に危害を加えた場合、Dangerous Dogs Act 1991に基づき刑事罰の対象になります。 自由の裏には、それに見合う責任があるのです。

オフリードが禁止される場所

道路沿い・家畜のいる農地・子どもの遊び場・3月〜7月のOpen Access Land(野鳥保護)では、リード着用が義務または強く推奨されます。地域のPublic Spaces Protection Orders(PSPO)も確認が必要です。

64%がオフリード|データで見る散歩の実態

PDSAの「PAW Report」によると、イギリスの犬飼い主の64%がオフリードまたはロングリードで散歩しています。 犬が自由に走り回り、匂いを嗅ぎ、探索できる環境を提供しているのです。

64%

オフリード運動を提供する飼い主

PDSA PAW Report 2022より。69%が他の犬との交流機会も提供

一方で、都市部と田舎では状況が異なります。 都市部では7%の飼い主が「散歩中のエンリッチメント(行動の充実)の機会がない」と回答したのに対し、田舎ではわずか3%でした。

イギリスの犬の散歩は1日2回が基本です。 朝と夕方、それぞれ30分から1時間ほど。 オフリードで走り回れる時間があるからこそ、犬のストレス発散になり、問題行動の予防にもつながります。

ロンドンのような都市でも、ハムステッド・ヒースやリッチモンド・パークなど広大なオフリードエリアが存在します。 リッチモンド・パークは約1,000ヘクタールもの広さがあり、野生の鹿と共存しながら犬を自由に遊ばせることができます。 しかし、すべての公園でオフリードが許可されているわけではありません。 子どもの遊具エリアや野鳥保護区域など、リード必須のゾーンも設けられています。 地域ごとのルール確認は必須です。

暗黙のルール|黄色いリボンの意味

イギリスのオフリード文化には、法律には書かれていない暗黙のルールがあります。 これを知らないと、現地で思わぬトラブルを招くことも。

リードをしている犬には自分の犬を近づけない
相手の犬がリードなら、自分もリードにつなぐ
呼び戻しが完璧でない犬はオフリードにしない
他の犬に近づく前に飼い主に声をかける
黄色いリボンの犬には絶対に近づかない

特に重要なのが「黄色いリボン」のルールです。 リードやバンダナに黄色いリボンを付けた犬は「スペースが必要」というサインを出しています。

Yellow Dog UK|黄色いリボンの意味

黄色いリボンは「この犬には近づかないで」という視覚的なサイン。怪我からの回復中、社会化トレーニング中、不安を抱えている犬などが着用します。攻撃的という意味ではなく「今は距離が必要」という合図です。見かけたら自分の犬をリードにつなぎ、距離を取りましょう。

RSPCAも「他の犬がリードなら、自分の犬もリードにすべき」と推奨しています。 これは単なるマナーではなく、すべての犬と飼い主が安心して散歩を楽しむための配慮です。 相手の犬がなぜリードをしているのか、その理由はさまざま。 怪我や病気、トラウマ、トレーニング中など、事情を知らないまま近づくのは避けるべきです。

「呼び戻しができることは、犬を安全に保ち、トラブルを防ぎ、散歩をストレスのないものにするために不可欠です」
— The Royal Kennel Club

ロイヤルケネルクラブは、オフリードで散歩する前に「Good Citizen Dog Scheme」などのトレーニングプログラムで呼び戻しを完璧にすることを推奨しています。 このプログラムはPuppy Foundation、Bronze、Silver、Goldの4段階があり、段階的に呼び戻しスキルを身につけていきます。

リコール訓練では、まず自宅や庭など刺激の少ない環境から始めます。 名前を呼んで振り向いたらご褒美を与え、徐々に距離や環境の難易度を上げていくのが基本です。 公園でオフリードにする前に、ロングリード(5〜10メートルの長いリード)で練習する飼い主も多くいます。 この自由を享受するには、相応のスキルと責任が必要です。

まとめ

イギリスのオフリード文化は「リード義務がない」のではなく「コントロールできれば自由」という考え方に基づいています。64%の飼い主がオフリード散歩を実践する一方、黄色いリボンなど独自のマナーで秩序を保っています。日本とは異なる「責任ある自由」という価値観が、この文化を支えているのです。

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