この記事でわかること
イギリスでは犬を電車・地下鉄・バスに「ケージなし・無料」で乗せられます。日本のように10kg制限やケージ必須のルールはなく、大型犬もリードだけで乗車可能。この違いを生んだ文化的背景と具体的なルールを解説します。
日本で犬と電車に乗ろうとすると、まず頭を悩ませるのがケージの問題です。 JRでは「縦・横・高さの合計が120cm以内、重さ10kg以内」という厳格なサイズ制限があり、中型犬以上はそもそも乗車できません。
ところがイギリスでは事情がまったく異なります。 ゴールデンレトリーバーもラブラドールも、リードをつけるだけで電車に乗れるのです。 しかも運賃は無料。 日本の飼い主からすると、にわかには信じがたい光景かもしれません。
イギリスの電車は犬に寛容すぎる
National Rail(イギリスの鉄道統括機関)の公式ルールによると、犬は1人あたり2匹まで無料で乗車できます。 ファーストクラスでもスタンダードクラスでも同じです。
2匹まで無料
イギリスの電車における犬の乗車ルール
3匹目以降は大人運賃の最大50%
必要な条件は「リードまたはキャリーで管理すること」と「座席に乗せないこと」の2つだけ。 ケージに入れる必要はありません。
もちろん、他の乗客に迷惑をかけたり危険な行動をとったりすれば、スタッフの判断で下車を求められることはあります。 しかし基本的には「犬も乗客の一員」として扱われるのがイギリス流です。
犬の電車乗車ルール比較
ケージ必須、10kg以内、290円の手回り品料金。中型犬以上は乗車不可
リードのみでOK、サイズ制限なし、2匹まで無料。大型犬も乗車可能
この差はどこから来るのでしょうか。 イギリスでは1824年にRSPCA(世界初の動物愛護団体)が設立されて以来、「動物は感情を持つ存在」という考え方が社会に根付いてきました。 公共交通機関での犬の扱いにも、その価値観が反映されているのです。
ロンドンの地下鉄・バスも犬は無料
ロンドンを訪れると、地下鉄(Tube)やバスの中で犬を連れた人をよく見かけます。 TfL(Transport for London)が運営するすべての交通機関—地下鉄、バス、トラム、DLR、オーバーグラウンド—で犬は無料です。
TfLの公式ルール
「介助犬は無料で同伴できます。その他の犬や攻撃的でない動物も、拒否する正当な理由がない限り無料で同伴できます。リードまたは適切な容器で管理し、座席には乗せないでください」—TfL運送約款より
注目すべきは「拒否する正当な理由がない限り」という表現です。 つまりデフォルトは「受け入れる」であり、例外的な場合にのみ断られる仕組みになっています。 日本の公共交通機関とは発想が逆ですね。
ただし、エスカレーターは例外です。 犬の毛や爪が巻き込まれる危険があるため、介助犬以外はエスカレーターを使えません。 階段かエレベーターを利用することになります。
エスカレーターは禁止
犬の毛や爪がエスカレーターの隙間に巻き込まれる事故が起きています。階段かエレベーター(リフト)を使いましょう。現在、ロンドン地下鉄の90駅以上がステップフリーで、犬連れにも利用しやすくなっています。
バスについても同様のルールが適用されます。 運転手の判断で乗車を断られることはありますが、「犬だから」という理由だけで拒否されることはありません。 実際、ロンドン市議会への質問に対し、TfLは「運転手は犬を連れた乗客の乗車を恣意的に拒否すべきではない」と回答しています。
なぜイギリスは犬に寛容なのか
この寛容さの背景には、イギリス社会における犬の位置づけがあります。 イギリスでは犬は単なる「ペット」ではなく「家族の一員」。 一緒に出かけるのは当たり前という感覚が社会全体に浸透しています。
また、イギリスは「パブ文化」の国でもあります。 犬連れでパブに入り、足元で犬を休ませながらビールを飲む—そんな光景が日常的に見られます。 公共交通機関もその延長線上にあり、「犬と一緒に移動すること」が社会インフラとして当たり前に受け入れられているのです。
一方、日本では「動物は管理されるべき存在」という考え方が強く、公共空間での犬の行動が厳しく制限されてきました。 ケージ必須のルールは、その象徴とも言えます。 どちらが良い悪いではなく、文化的背景の違いが制度に表れているのです。
ちなみに、長距離バス(National ExpressやMegabus)は例外で、介助犬以外の犬は乗車できません。 しかし電車が充実しているイギリスでは、犬連れでの長距離移動も十分に可能です。 寝台列車のCaledonian Sleeperでは、追加料金を払えば犬と同じ個室で眠ることもできます。
まとめ
イギリスでは犬を電車・地下鉄・バスにケージなし・無料で乗せられます。この寛容さは200年以上かけて築かれた動物福祉の文化に根ざしています。日本とは違うアプローチですが、「犬も社会の一員」という考え方から学べることは多いのではないでしょうか。