コラム

犬に服を着せると変な目で見られる?イギリスの「防寒以外はNG」という価値観

59%が「ファッション服は容認できない」と回答

約7分
犬に服を着せると変な目で見られる?イギリスの「防寒以外はNG」という価値観

この記事でわかること

イギリスでは59%の人が「防寒以外の目的で犬に服を着せるのは容認できない」と回答。RSPCAは犬の仮装を「有害な社会規範」と位置づけています。日英の動物観の違いと、機能的な服が認められる条件を解説します。

日本では犬用ファッションが文化として定着しています。

SNSには可愛い服を着た犬の写真があふれ、ペットショップにはカラフルなウェアが並びます。

しかしイギリスでは、こうした光景はかなり珍しいものです。

防寒や防雨といった機能的な目的以外で犬に服を着せると、周囲から奇異な目で見られることも。

なぜイギリスでは「犬に服を着せない」のが普通なのでしょうか?

その背景には、日本とは大きく異なる動物観と福祉意識があります。

59%が「ファッション服はNG」と回答

RSPCAが毎年実施している「Animal Kindness Index」は、イギリス国民の動物に対する意識を調査するものです。

2023年の調査では、驚くべき結果が出ました。

59%

「暖かさ以外の目的で犬に服を着せるのは容認できない」

RSPCA Animal Kindness Index 2023

過半数のイギリス人が、ファッション目的で犬に服を着せることを「容認できない」と考えています。

2024年の調査でも傾向は変わりません。

「ファッションや娯楽のために動物に服を着せることは常にOKか」という質問に対し、「常にOK」と答えたのはわずか9%でした。

一方で「絶対にNG」と答えた人は39%にのぼります。

興味深いのは、子どもたちの反応です。

子どもは大人よりもさらに批判的で、動物の仮装に対して強い抵抗感を示しました。

イギリスでは幼い頃から「動物は感情を持つ存在」という教育が行われていることが影響しているのかもしれません。

ところが、Googleでは「dog costume」の検索が10月に急増し、通常月の6倍(約18,000件)に達します。

ハロウィンやクリスマスの時期には、意識と行動にギャップがあるようです。

RSPCAが「有害な社会規範」と呼ぶ理由

RSPCAは犬の仮装を単なるマナーの問題ではなく、動物福祉の観点から問題視しています。

具体的には、以下のリスクが指摘されています。

ストレス:見慣れない服に犬は恐怖や不安を感じる
過熱:特に室内や暖かい季節は体温調節ができない
呼吸困難:パグやフレンチブルドッグなど短頭種は特に危険
コミュニケーション阻害:他の犬や人との意思疎通が困難に
誤飲リスク:装飾品を噛み切って飲み込む危険性

RSPCAは公式に「動物を衣装で着飾り娯楽に使うことは福祉を害する可能性がある」と声明を出しています。

また「動物をモノとして扱うのではなく、固有のニーズを持つ感覚ある存在として認識すべき」とも述べています。

では、犬が服を嫌がっているかどうかは、どう見分ければよいのでしょうか。

専門家によると、服を着せた直後に固まる、歩き方がぎこちなくなる、しきりに体を振る、といった行動は不快のサインです。

耳を後ろに倒す、尻尾を下げる、あくびを繰り返すといった行動も、ストレスを感じている証拠とされています。

こうしたサインが見られたら、すぐに服を脱がせてあげることが推奨されています。

英国獣医師会(BVA)も「ペットはファッションアクセサリーではない」との見解を表明しました。

「ファンシードレス(仮装)は絶対に容認されません。私たちは犬の尊厳を損なうものをやめさせようとしています」
— キャロライン・キスコ(ケネルクラブ事務局長)

ケネルクラブはドッグショーでの仮装を禁止しています。

許可されるのは「犬用コートに相当する程度の機能的な服」のみ。

サンタの衣装を着せてドッグショーに参加することは認められていません。

防寒・防雨目的の服は推奨される

ただし、すべての犬服がNGというわけではありません。

PDSAは「必要な犬には防寒コートを着せるべき」と明確に推奨しています。

犬服に対する考え方の違い
イギリス

機能性が最優先。防寒・防雨・術後ケアなど明確な理由がある場合のみ着用。ファッション目的は福祉の問題とみなされる。

PDSAによると、以下の犬には冬の散歩でコートを着せることが推奨されます。

  • グレイハウンドやウィペットなど被毛が薄い犬種
  • チワワなど小型犬
  • 子犬や高齢犬
  • 体重不足の犬
  • 病気療養中の犬

一方で、ハスキーやマラミュートなど寒冷地原産の犬種には不要とされています。

PDSAは「犬が震えている、または動きが鈍くなったらすぐに家に連れ帰るべき」ともアドバイスしています。

防寒コートを選ぶ際は、サイズが合っていることが最も重要です。

きつすぎると動きを制限し、緩すぎると保温効果が得られません。

また、犬用に設計された製品を選ぶことが推奨されています。

人間用の衣類を代用すると、腕を通す穴の位置が合わず、歩行の妨げになることがあります。

レインコートは撥水性があり通気性も確保されたものを、冬用コートは保温性と動きやすさを両立したものを選びましょう。

室内でのコート着用に注意

現代のイギリスの家庭は暖房が効いているため、ほとんどの犬は室内でコートを着る必要はありません。過熱の原因になる可能性があります。屋外用のコートは外出時のみに使用しましょう。

イギリスの価値観をそのまま日本に当てはめる必要はありません。

しかし「犬は服を着ることで本当に快適なのか」という視点は、日本の飼い主にとっても参考になるのではないでしょうか。

愛犬の表情や仕草をよく観察し、嫌がっているサインがないかを確認すること。

それが、イギリス流の「動物福祉を優先する」という考え方から学べる、最も実践的なポイントかもしれません。

まとめ

イギリスでは59%が「防寒以外の犬服は容認できない」と回答し、RSPCAは仮装を「有害な社会規範」と位置づけています。ファッションより福祉を優先する価値観は、日本の飼い主にとって新しい視点かもしれません。愛犬が本当に快適かどうか、服を着せる目的を一度考えてみるきっかけになれば幸いです。

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