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猫の歯磨き・口腔ケアのやり方ガイド

獣医師が解説する正しいデンタルケアの方法

約10分
猫の歯磨き・口腔ケアのやり方ガイド

この記事の監修者

谷口 史奈

谷口 史奈

猫の診療室モモ 院長

猫の診療室モモ

山口大学農学部獣医学科 卒

獣医師免許JSFMねこ医学会ISFM(国際猫学会)

品川区にある「猫の診療室モモ」という猫の病院の院長です。 すべての猫にもっと気軽に医療を受ける機会をもってほしい、との思いから猫だけの病院を開業いたしました。 診療は一般的な内科診療を主とし、送迎や往診、長期ホテル預かり、保護猫活動のお手伝いなども積極的に行い、「猫との暮らしを、もっとハッピーに」をテーマとした診療を目指しています。 飼い主さまとよく相談しながら、それぞれの家庭での「幸せ」を第一に考えてケアを行っています。

この記事でわかること

  • 猫の歯磨きの適切な頻度と歯周病の基礎知識
  • 嫌がる猫でも実践できる段階的な歯磨き方法
  • 歯磨きグッズの選び方と代替ケア方法

この記事は 約8分 で読めます。

愛猫の口臭が気になって動物病院を受診したら歯石を指摘され、歯磨きをしようとしたら激しく嫌がられて困っていませんか。

実は3歳以上の猫の約8割が何らかの歯周病を抱えているといわれています。

しかし適切な頻度で歯磨きを行えば、歯周病の予防や進行を遅らせることができます。

ポイント

歯磨きの理想的な頻度は1日1回です[1]。難しい場合でも、最低週2~3回は行うようにしましょう。

この記事では、猫の歯周病の基本知識から嫌がる猫でも実践できる歯磨きの方法まで、段階的に詳しく解説していきます。

愛猫の歯の健康を守るための第一歩を、今日から始めましょう。

猫の歯周病とは?原因と症状を知る

猫の歯周病は、歯垢に含まれる細菌が原因で起こる炎症性の疾患です。

歯肉だけに炎症がある状態を歯肉炎、さらに進行して歯を支える組織まで破壊されると歯周炎と呼ばれます[2]

これら2つを総称して歯周病といいます。

歯周病の主な原因

歯周病の最大の原因は、歯垢と歯石です。

食後数時間で歯の表面に歯垢が形成され、猫の場合は約1週間で石灰化して歯石に変わってしまいます[3]

豆知識

猫の口腔内は概ね pH7.5〜8.5のアルカリ性と言われており、虫歯にはなりにくいですが歯石はできやすい環境です。

また、猫白血病ウイルス感染症や猫免疫不全ウイルス感染症などで免疫力が低下している状態だと歯周病になりやすくなります。

歯周病の症状

初期症状として、歯茎が赤く腫れる、口臭が強くなるなどがみられます。

進行すると以下のような症状が現れます。

よだれが増える
食欲が低下する、片側だけで噛む
口周りを触られるのを嫌がる
歯がぐらついたり抜け落ちる

さらに重症化すると、目の下や頬が腫れる、顎の骨が溶けるといった深刻な状態に陥ることもあります[2]

注意点

歯周病は口腔内だけの問題ではありません。細菌が血液を通じて心臓や腎臓、肝臓などの臓器に影響を及ぼすリスクもあります。

猫の歯磨きの適切な頻度と正しいやり方

歯周病予防に最も効果的なのは、毎日の歯磨きです。

歯垢が歯石に変わる前に取り除くことが重要になります。

理想的な歯磨きの頻度

毎日1回が理想的です[1]

しかし毎日が難しい場合でも、最低週2~3回は歯磨きを行うようにしましょう。

約7日
歯垢が歯石になる期間

猫は数日〜約1週間で歯石化が進みやすいと報告があります。人に比べ速いため、こまめなケアが必要です。

このため、こまめな歯磨きが必要なのです。

正しい歯磨きの手順

歯ブラシを使った正しい歯磨き方法をご紹介します。

1

歯ブラシを濡らす

必ず水で濡らしてから使用します。乾いたままだと歯茎を傷つける恐れがあります[4]

2

猫用歯磨きペーストをつける

人間用は使用しないでください。フッ素などが含まれており、猫には有害な場合があります[4]

3

歯と歯ぐきの境目

歯と歯ぐきの境目に毛先を当て、小刻みに磨く。

4

優しく磨く

力を入れすぎず、軽い力で磨きます。嫌がったらその日は終了しましょう。

1回で全ての歯を磨けなくても大丈夫です。

磨けなかった部分は翌日に回すなど、無理のない範囲で続けることが大切です。

嫌がる猫でもできる!段階的な歯磨きトレーニング

多くの猫は歯磨きを嫌がります。

しかし段階的に慣らしていくことで、徐々に受け入れてくれるようになります。

若いうちから始めることの重要性

可能であれば、若齢のころから口腔内を触られることに慣れさせておくことが重要です[2]

歯周病が進行してからでは、口を触られることに強い拒否感を示す猫が多くなります。

ポイント

「歯磨き=嫌なことではない」という良いイメージをつけることが成功の鍵です。

段階的なトレーニング方法

以下のステップで少しずつ慣らしていきましょう。

各ステップには1~2週間かけて、焦らず進めることが大切です。

リラックスしているときに、優しく口周りを触ります。触らせてくれたら、お気に入りのおやつやご褒美をあげましょう[1]。慣れてきたら、唇をめくって歯を見せてもらいます。

猫用の歯磨きペーストを指につけて、匂いを嗅がせたり舐めさせたりします。毎日歯磨きペーストを犬歯1本に塗り、その後ご褒美を与えます[1]

ガーゼやシートを指に巻いて、歯と歯茎の表面を優しくなでます。最初は前歯から始めて、徐々に奥歯へ進みましょう。

少量の歯磨きペーストをブラシにつけてなめさせます[1]。慣れたら、実際に歯を磨いてみましょう。最初は数秒から始めて、徐々に時間を延ばしていきます。

成功させるコツ

以下のポイントを意識すると、成功率が上がります。

リラックスしている時間帯を選ぶ
短時間で終わらせる(最初は数秒でOK)
嫌がったらすぐに終了する
必ずご褒美をあげて良いイメージをつける
無理強いせず焦らず進める

注意点

すでに歯周病があり痛みがある場合、歯磨きをすることで痛みを伴う可能性があります。まず動物病院で治療してから歯磨きを始めましょう。

どうしても無理なとき!歯磨きグッズと代替ケア

様々な工夫をしても歯ブラシでの歯磨きが難しい場合があります。

そんなときは、他のデンタルケアグッズを活用しましょう。

おすすめデンタルケアグッズ

デンタルガム・おやつ
  • 噛むことで歯垢を落とす
  • 楽しみながらケアできる
  • 補助的な効果として活用
歯磨きジェル・スプレー
  • 指で歯に塗るだけで簡単
  • 抗菌作用のある成分配合
  • 歯ブラシへの移行期に便利
歯磨きシート
  • 指に巻いて使用
  • 歯ブラシより抵抗が少ない
  • 初心者に優しい

デンタルケアフードの活用

ドライフードには歯を研磨する効果があり、歯垢の蓄積を防ぐことができます[5]

デンタルケア専用フードは粒の形状を工夫することで、歯石の蓄積を抑える効果が証明されています[5]

ただし、これらはあくまでも補助的なケアです。

歯磨きの代わりにはなりませんが、併用することで効果を高められます。

定期的な動物病院でのチェック

少なくとも年に1回は動物病院で歯科検診を受けましょう。

家庭でのケアでは確認できない歯周ポケットの状態なども、獣医師が専門的に診てくれます。

治療費の相場

歯科処置の費用と所要時間の目安
処置内容 目安費用 所要時間 備考
歯科検診 ¥1,000~¥3,000 15~30分 年1回推奨
スケーリング(歯石除去) ¥20,000~¥50,000 1~2時間 全身麻酔が必要
抜歯 ¥30,000~¥100,000 1~3時間 本数や状態で変動

注意点

本料金表は、公開されている統計・調査資料(アニコム家庭どうぶつ白書、日本獣医師会関連資料など)をもとにした目安です。実際の診療内容・費用は施設・地域・症例により異なるため、正確な金額は必ず各動物病院へご確認ください。

よくある質問

歯磨きは何歳から始めればいいですか?

できるだけ若いうちから始めることをおすすめします。子猫のうちから口周りを触られることに慣れさせておくと、成猫になってからの歯磨きがスムーズです。成猫からでも、根気よく段階的に慣らしていけば歯磨きできるようになります。

一度ついた歯石は家庭で取れますか?

家庭での歯磨きでは歯石を取り除くことはできません。歯石除去には動物病院での専門的な処置が必要です。飼い主さんが無理に取ろうとすると、歯や歯茎を傷つける危険があるため、必ず獣医師に相談しましょう。

高齢猫でも歯磨きは必要ですか?

高齢猫こそ歯磨きは重要です。ただし、すでに重度の歯周病がある場合は全身麻酔での治療が難しいこともあります。かかりつけの獣医師と相談しながら、その子に合ったケア方法を見つけましょう。痛みがある場合は無理に歯磨きせず、まず治療を優先します。

まとめ

猫の歯磨きは毎日1回が理想、最低でも週2~3回行うことで歯周病を予防できます。約1週間で歯垢が歯石に変わるため、こまめなケアが重要です。嫌がる猫でも、口周りを触ることから始めて段階的に慣らしていけば、歯磨きできるようになります。若いうちから始めることが理想ですが、成猫からでも遅くありません。歯ブラシが難しい場合は、液体歯磨きやデンタルジェルなどの代替ケアグッズも活用しましょう。年に1回は動物病院で歯科検診を受け、専門家のチェックを受けることも大切です。愛猫の健康な歯を守るため、今日から無理のない範囲でデンタルケアを始めてみましょう。

本記事は一般的な情報提供を目的としています。症状や治療方針は個体差が大きいため、必ず獣医師等の専門家にご相談ください。

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