チャウチャウを飼う前に知っておきたいこと
チャウチャウは2,000年以上の歴史を持つ中国原産の番犬。飼い主には深い忠誠心を見せる一方、独立心が非常に強く、しつけには相当な経験と根気が求められます。青黒い舌とライオンのようなたてがみが最大の特徴です。
チャウチャウ 基本データ
ライオンのようなたてがみ、青黒い舌、どこか達観したような表情。チャウチャウは他のどの犬種とも似ていない、唯一無二の存在感を放つ犬です。中国で2,000年以上にわたり番犬・猟犬として人と暮らしてきましたが、誰にでも懐くタイプではありません。飼い主を選ぶ犬種だからこそ、迎える前に知っておくべきことがあります。
チャウチャウの基本情報
チャウチャウの起源は中国。漢の時代にはすでに番犬や猟犬として飼育されていた記録が残っています。北方のスピッツ系犬種の血統と、マスティフ系犬種の血統を併せ持つとされ、がっしりした骨格と厚い被毛はその名残。中国が鎖国政策をとっていた影響で、18世紀後半まで西洋世界には知られていませんでした。
「チャウチャウ」という名前の由来には諸説あります。18世紀にイギリスの貿易船が中国から雑貨を運ぶ際、積荷を総称して「チャウチャウ(雑多なもの)」と呼んでいたことから犬にもその名がついたという説が有力。中国語の「獒(ごう)」に由来するという説もあり、正確なルーツはわかっていません。
転機は1780年。イギリスの商人が中国からチャウチャウを持ち帰ったのが、ヨーロッパ進出のはじまりです。その後、ヴィクトリア女王がチャウチャウを飼ったことで一躍注目の的に。1894年にイギリスのケネルクラブで正式に犬種登録されました。日本ではベルギーに本部を置く世界最大級の犬籍登録団体であるFCI(国際畜犬連盟)の分類に準じ、第5グループ「原始的な犬・スピッツ」に属しています。
外見で最も目を引くのは、青黒い舌と歯茎。犬種標準として完全な青黒い舌が求められるのはチャウチャウとシャーペイの2犬種だけで、古代中国では「夜空の色を舐めた犬」という伝説も語り継がれています。被毛は粗くて立ち上がるラフコートが主流ですが、なめらかなスムースコートも存在。毛色はレッド、ブラック、ブルー、フォーン、クリーム、ホワイトの6色で、パーティカラー(まだら模様)は犬種標準では認められていません。体高はオス48〜56cm、メス46〜51cmとされ、中型犬のなかではずっしりとした体格です。歩き方にも特徴があり、後ろ足をあまり曲げずに歩く「スティルテッドゲイト」と呼ばれる独特の歩様は、チャウチャウならではのもの。
チャウチャウの性格・特徴
チャウチャウの性格を一言で表すなら「猫のような犬」。飼い主に対しては静かに寄り添い、深い愛情を示しますが、ベタベタと甘えてくることはほとんどありません。自分のペースを何より大切にし、呼んでもこちらを見てから判断するような、独特の間合いがあります。
家族以外の人間や見知らぬ犬への警戒心は相当なもの。社会化が不十分だと、散歩中に他の犬とすれ違うだけで緊張し、攻撃的な態度を見せることもあります。番犬としての素質は一級品ですが、ドッグランで他の犬と無邪気に遊ぶ光景はあまり期待できません。一方で、信頼を寄せた相手にはそっと体を預けてくる瞬間があり、それがチャウチャウオーナーにとってたまらない喜びでもあります。
多頭飼いは慎重に。特にオス同士は相性が合わないケースが多く、先住犬がいる場合は慎重な顔合わせが欠かせません。小さな子どもがいる家庭では、子どもの予測しにくい動きにチャウチャウがストレスを感じる場合があるため、必ず大人の監督下で接触させましょう。
しつけでは「強制しない」がキーワード。チャウチャウは叱られると反発して関係が悪化しやすい犬種です。おやつや褒め言葉を使ったポジティブな強化法が基本。指示に従わなくても怒らず、成功したときにたっぷり褒める。その繰り返しで少しずつ信頼関係を築いていくのがチャウチャウ流のしつけです。
- 犬の独立した性格を尊重できる人
- しつけ経験が豊富で、根気強く向き合える人
- 被毛の手入れに毎日時間を割ける人
- 初めて犬を飼う人
- 犬と一緒にドッグランや旅行を楽しみたい人
- 従順で甘えん坊な犬を求めている人
子犬期の社会化がカギ
チャウチャウは生後3〜14週の「社会化期」に、できるだけ多くの人・犬・環境に触れさせることが極めて重要。この時期を逃すと成犬になってからの行動修正は非常に難しく、他者への攻撃性が固定化する恐れがあります。パピークラスへの参加も有効な手段です。
チャウチャウの飼い方のポイント
運動量は中程度。1日30分〜1時間の散歩を朝夕に分けて行えば十分です。ただし、暑さには極端に弱い犬種。分厚いダブルコート(硬い上毛と密な下毛の二層構造)に覆われた体は熱がこもりやすく、気温25度を超えたら散歩は早朝か夜間のみに切り替えましょう。真夏は室内で過ごす時間が長くなるため、知育おもちゃなどで精神的な刺激を与える工夫も欠かせません。熱中症はチャウチャウにとって命に関わるリスク。散歩から帰ったあとに荒い呼吸が続く、よだれが異常に多い場合は体を冷やしながらすぐに動物病院へ連れて行ってください。
被毛のケアは覚悟が必要です。ラフコートの場合、毎日のブラッシングが欠かせません。特に首周りのたてがみ部分は毛玉ができやすく、放置すると蒸れて皮膚トラブルの原因に。春と秋の換毛期は尋常でない量の抜け毛が出ます。掃除機は毎日、衣類のコロコロは常に手元に。「犬の毛は調味料」くらいに割り切れないと厳しい犬種です。
毎日のブラッシング
スリッカーブラシで全身をとかし、毛玉を予防。首・胸・後ろ足の飾り毛は特に念入りに。所要時間は約15〜20分が目安です。
月1〜2回のシャンプー
低刺激のシャンプーで皮脂汚れを洗い流します。乾かし残しは皮膚炎の原因。ドライヤーで被毛の根元まで完全に乾かすことが重要です。大型ドライヤーがあると作業がはかどります。
目・耳・歯の定期チェック
目の周りの毛が目に入っていないか、耳の中に汚れが溜まっていないかを週1回は確認。歯磨きは毎日が理想ですが、チャウチャウは口元を触られるのを嫌がる個体が多いため、子犬のうちから少しずつ慣らしましょう。
住環境は戸建てが理想的ですが、十分な散歩と室温管理ができればマンション飼育も不可能ではありません。ただし体重20〜32kgの中型犬であるため、集合住宅のペット規約は必ず事前に確認を。暑さ対策として夏場は24時間エアコン稼働が前提になるため、電気代の上乗せも予算に入れておきましょう。
ブラッシングの基本については「犬のブラッシングのやり方・頻度ガイド」も参考にしてみてください。
チャウチャウがなりやすい病気
チャウチャウには犬種特有の好発疾患がいくつかあります。特に目・関節・皮膚のトラブルが目立つ傾向。ブリーダーから迎える場合は、親犬の健康検査(股関節・肘関節・眼科スクリーニング)の結果を必ず確認してください。イギリスの犬種登録団体であるThe Kennel Club(英国ケネルクラブ)でもこれらの検査が推奨されています。
| 疾患名 | 主な症状 | 好発年齢 | 予防・早期発見 |
|---|---|---|---|
| 眼瞼内反症(まぶたが内側に巻き込む疾患) | 涙・目やにの増加、目をしょぼしょぼさせる | 子犬〜若齢 | 定期的な眼科検診 |
| 股関節形成不全(股関節の発育が不完全になる疾患) | 後ろ足のふらつき、運動を嫌がる | 1〜2歳 | 体重管理、親犬のスコア確認 |
| 肘関節形成不全 | 前足を引きずる(跛行)、階段を嫌がる | 4〜10ヶ月 | 親犬の検査結果確認 |
| 皮膚疾患(アレルギー性皮膚炎等) | かゆみ、脱毛、皮膚の赤み | 全年齢 | こまめなブラッシングと皮膚チェック |
| 甲状腺機能低下症(ホルモン分泌が低下する疾患) | 元気がない、太りやすい、毛艶の悪化 | 中年期以降 | 年1回の血液検査 |
特に注意したい疾患:眼瞼内反症
チャウチャウは目が小さく深くくぼんでいるため、まぶたが内側に巻き込む眼瞼内反症(エントロピオン)を発症しやすい犬種です。まつ毛が角膜を常に刺激し、放置すると潰瘍や失明に至ることも。涙が異常に多い、目を前足でこする、目を開けづらそうにしているといった症状が見られたら、すぐに動物病院を受診してください。軽度なら点眼薬、重度の場合は外科手術で対応します。
関節疾患のリスクを下げるには、適正体重の維持がもっとも効果的。チャウチャウは食欲旺盛な個体が多く、おやつの与えすぎで肥満になりやすい傾向があります。フードの量は獣医師と相談して決め、定期的に体重を測定しましょう。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。症状や治療方針は個体差が大きいため、必ず獣医師にご相談ください。
皮膚トラブル全般については「犬の皮膚病の症状と原因」で詳しく解説しています。
チャウチャウの価格相場と入手方法
チャウチャウは国内での繁殖頭数が少なく、流通量が限られています。ブリーダーから迎える場合、ペットタイプで30〜50万円が目安。血統や毛色、性別によっては60万円を超えることも珍しくありません。ペットショップでの取り扱いはほぼないため、国内の犬籍登録団体であるJKC(ジャパンケネルクラブ)のブリーダー検索や犬種専門のコミュニティで情報を集めるのが近道です。繁殖頭数の少なさから予約待ちになることも多いので、早めの情報収集が大切です。保護犬として譲渡される機会はまれですが、里親募集サイトを定期的にチェックするのもひとつの方法です。
初期費用としては、ケージ・サークル、食器、首輪・リード、トイレ用品、混合ワクチン接種、畜犬登録などを合わせて約8〜12万円。これに加え、不妊・去勢手術を行う場合は3〜5万円ほど上乗せされます。中型犬用のケージは大きめのサイズが必要なため、小型犬より割高です。
年間維持費の内訳は、フード代6〜9万円、ペット保険4〜6万円、ワクチン・定期検診2〜3万円、シャンプー・トリミング代4〜8万円、日用品・消耗品2〜3万円。さらに急な通院に備えて5〜10万円は予備費として確保しておくべきです。夏場の24時間エアコン代も上乗せされるため、月額の飼育費は3〜4万円程度を見込んでおきましょう。
掲載している価格はあくまで目安です。実際の価格は血統、毛色、性別、年齢、地域、ブリーダー、時期などによって大きく異なります。
よくある質問
チャウチャウはマンションでも飼える?
体重20〜32kgの中型犬なので、ペット可物件でも規約を必ず確認しましょう。十分な散歩と夏場の室温管理(24時間エアコン稼働)ができれば飼育は可能ですが、理想は庭付きの戸建て。吠え声は少なめですが、体格があるため階下への足音にも配慮が必要です。
チャウチャウは初心者でも飼える?
率直に言うと、初めて犬を飼う方にはおすすめしにくい犬種です。独立心が非常に強く、一般的なしつけ方法が通じないことも多々あります。子犬期の社会化対応を誤ると、成犬になってからの行動修正が困難に。犬の飼育経験があり、この犬種の気質を理解したうえで根気強く向き合える方に向いています。
チャウチャウの飼育費用は月にいくらかかる?
月額の目安は3〜4万円です。内訳はフード代5,000〜8,000円、ペット保険3,000〜5,000円、日用品・消耗品2,000〜3,000円、シャンプー・トリミング代3,000〜7,000円など。夏場のエアコン代や急な通院費の積み立ても含めるとこの水準になります。好発疾患の治療が必要になった場合はさらに上乗せされるため、ペット保険への加入を検討しておくと安心です。
まとめ
チャウチャウは威厳ある容姿と猫のような独立心が魅力の中国古代犬種。しつけと被毛ケアに相当な手間がかかり、犬の飼育経験がある方向けです。信頼関係が築けたときの絆は格別ですが、暑さ対策・目と関節の健康管理・毎日のブラッシングを覚悟のうえで迎えてください。